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映画『窮鼠はチーズの夢を見る』感想~過激な性描写だけじゃないBL超えの世界

  • 2020年9月12日
  • 2021年3月22日
  • 邦画

【※成田凌さんが第44回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞されました。おめでとうございます!】

この作品はいわゆるBLコミックの実写化なのですが、BLコミックなるものをこれまで一度も読んだことない私。

同性愛を否定はしませんが、自分自身はいたってノンケ。

今回の作品も、映画の予告編以上の予備知識は一切なく観てきました。

自分のまったく知らない世界を覗いてみようという好奇心

主演の大倉忠義さん、成田凌さんが、こういう作品でどんな演技を見せてくれるのか

そして監督の行定勲監督が2人をどう料理しているのか

そのあたりも気になって観てきました。

「映画『窮鼠はチーズの夢を見る』感想~過激な性描写だけじゃないBL超えの世界」

では早速内容に入っていきましょう。

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映画『窮鼠はチーズの夢を見る』感想~過激な性描写だけじゃないBL超えの世界

客層は若い女性中心

お客さんの8割は若い女性でしたね。

観たいけど、女性一人で観に行くのにちょっと抵抗が…という人もいるようですが、女性ひとりで観に来ている人も少なくなかったようです。

予想以上に過激な性描写

R15ということで、カラミのシーン・性描写はなかなかすごいです。おそらく予想以上の過激さです。

誰か言ってましたが、確かに【綺麗な】AVと言っても言い過ぎではないかも…。

でも、後でも述べますが、これはこの作品にとって肝になるところでもあります。

行定監督の作品に対するこだわりといいますか、ここがなければ成立しない部分でもあります。

性描写の過激さばかりが注目されてしまうと、ちょっと違うんだけどな、という感じがします。

原作はBL作品の枠を超えた傑作

主演の大倉忠義さん、成田凌さんおふたりのファンという人も多いでしょうが、原作ファンという方もきっと多いでしょう。

私の周りでも、BLにハマっているという女性は少なからずいますが、男性でハマっているという人は知りませんね。

ハマっていても言いづらい世界なのでしょうか…。

私は原作未読なので原作の魅力についてはなにも分からないのですが、原作ファンの方の意見をネットなどで見てみると、とにかく普通のBL作品とはまったくレベルが違うそうですね。

過激な性描写を通して描かれる、その切ない心理描写が群を抜いて秀逸だということです。

BL作品としてではなく、BLに興味のない人にも、ひとつの切ない恋愛物語としてぜひ読んで欲しい、そんな作品だということです。

映画『窮鼠はチーズの夢を見る』見どころ(ネタバレはほぼありません)

生々しいエモーショナルな魅力

さて、原作未読でこの映画を観た私の率直な感想です。

内容的にはなかなかハードルが高かったかな…^^;というのが正直な感想です。

BL作品未経験の私としては、原作より前に実写を観てしまったせいでしょうか、性描写の生々しさに少々圧倒されてしまいました。

これがコミックだったら、もう少し落ち着いて、それぞれの会話や表情が楽しめたのかなと。

しかし、これは逆に考えれば、実写映画としてはすこぶる成功していると言えるものです。

おそらく行定監督もそのあたりをポイントとして作品を作られているように感じました。

行定監督といえば、その映像美で知られていますが、この作品は「オブラートにくるんだようにふわっと美しく…」とか、また逆に「きれいな光を当ててキラキラに美しく…」のどちらでもありません。

そんなぼんやりと美しいだけの映像では、この作品の本当の良さを表現することはできないのではないかと感じます。

原作を知らない、BLの世界を知らない私のような人間には、その生々しさに引いてしまうくらいの、ある種の熱量みたいなものが絶対的に必要なんだと思います。

そういう意味では、大倉忠義さん演じる大伴恭一の淡々とした中にも、成田凌さん演じる今ヶ瀬渉のかわいらしさの中にも、どちらにも、生々しいエモーショナルなものが存分に見て取れて、グイグイ引き込まれる作品になっているのは間違いありません。

大倉忠義の魅力

主演のお二人について。

まず大倉忠義さん。

すいません、私、大倉さんの作品をこれまであまり拝見していませんでしたが、今回の大伴恭一役、ドンピシャだったのではないでしょうか。

誰にでも優しく、そして仕事もできるエリートサラリーマン。でも、こと恋愛に対しては受け身で優柔不断。

流されるままの恋愛を繰り返してきた恭一。

30歳を過ぎた、若手とは違った落ち着きと、若手とは違ったぼんやりとした不安定さ。このアンバランスさがとてもいい。

感情の起伏が見られない分、それが逆にミステリアスな色気となって、恭一という人物を魅力的に、そのダメさ加減も説得力を持って見事に表現していました。

大倉忠義さんは舞台出演なども積極的にされているんですね。

関ジャニ∞のみなさん、それぞれ個性があって多彩だと思いますが、関ジャニ∞俳優部として、その魅力はますます仕事の幅を広げることでしょう。

今回の作品でも、年末の各賞レースに絡んでくるような気がします。

成田凌の色気

大倉忠義さんとは逆に、今年は成田凌さん出演の映画はこれで3本目の鑑賞。

それだけ映画界にとっては、今最も使いたい俳優さんのひとりということですね。

中でも特に印象に残ってるのが「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」で見せた、猟奇的犯人の浦野役です。

今回の今ヶ瀬役の、切なく可愛らしい表情が観客の心を捉えることは間違いないでしょう。

終演後、後ろの女性たちが「今ヶ瀬、頑張れ、頑張れって思っちゃうよね~」と興奮して話していましたが、そんな方が「スマホ~」の成田凌さんを見たら、そのギャップにきっと度肝を抜かれることでしょう。

ただ、まったく違った役ですが、内面に秘めるマグマのようなものは共通していて、それを切なくも、猟奇的にも、どちらでも表現できるところに、彼の魅力があるように思いました。

特にタバコを持つ手など、繊細な指の使い方には彼特有の色気を感じます。

成田凌さんも、間違いなく各映画賞で注目される一人となるでしょう。

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適材適所、行定勲監督こだわりの女優陣

他にも、恭一をめぐって4人の女性が出てきますが、演じている女優さん(吉田詩織、さとうほなみ、咲妃みゆ、小原徳子)それぞれが適材適所といった感じで魅力的した。

4者4様で、まさに恭一の流されっぷりが際立つキャスティング!!

吉田詩織(岡村たまき役)

今回の役柄は、恭一に密かに思いを寄せる控えめで健気な後輩社員の岡村たまき。

でも吉田さんご自身は、猪突猛進型だとか。

北海道出身の彼女は、18歳で女優になると決めた次の日には、上京のために飛行機のチケットを買っていたそうです。

今回も絶対にたまき役を掴むと決めてオーディションに望んだそうで、そういう芯の強さが、たまきのここぞというときの表情に表れていて、とても魅力的でした。

さとうほなみ(夏生役)

「ゲスの極み乙女。」のドラムス担当だという彼女。

歌手で俳優、あるいは俳優で歌手という人はたくさんいますが、ドラマーで女優という人は少ないのでは?

でも、すでにベテラン女優の雰囲気といいますか、安定した演技力。

それもそのはず、調べてみると、実力派演出家のもと、舞台もたくさん踏んでいるそうです。

バンド活動前はアイドルとしても活動していたそうですから、芸歴は長く、まさにベテラン女優の雰囲気も納得です。

咲妃みゆ(大伴知佳子役)

宝塚歌劇団雪組トップ娘役だった咲妃さん。

映画は今作が初めてだそうです。

個人的にはテレビドラマ「まだ結婚できない男」(CX)での住宅プロデューサー森山桜子役が印象に残っています。

ドラマではバリバリのキャリアウーマンでしたが、今回はまったく違う役どころだったので、最初は気が付きませんでした。

宝塚娘役トップだったというだけあって、とても品のあるかたですので、今度はガラッと違った役を見てみたいと思うプロデューサーはきっと多いのではないでしょうか。

小原徳子(井出瑠璃子役)

行定監督作品では「ジムノペディに乱れる」(2016年、板尾創路主演)に出演している小原徳子さん。

ちなみにこの「ジムノペディ~」も今回の「窮鼠~」と同じ脚本家の堀泉杏さんの作品です。

行定監督いわく、今回の女性陣の配役には特に慎重を期したそうで、小原さん演じる井出瑠璃子役には、性的なものを刺激するものを持っている女優さん、ということで彼女がキャスティングされたそうです。

なるほど納得の演技力でした。

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行定勲監督がこだわった女性陣4人。

でも、この4者4様の魅力的な女性陣を、成田凌が凌駕していく、という構図です。

なんだか…すごいですね…。

映画『窮鼠はチーズの夢を見る』には椅子ひとつにも作品を物語る力がある

この作品をどうにか理解しようと思い、たとえば成田さん演じる今ヶ瀬がもし女性だったら?と仮定して考えたりもしてみました。

普通の男女の恋愛に置き換えて考えてみれば、少しは理解できるのではないかと思ったのです。

しかし、置き換えてみて分かったこと、それは、男性同士の恋愛だからこそ切ないのだということです…当たり前といえば当たり前ですね…。

特にこの物語は、ノーマルの大伴とゲイの今ヶ瀬という2人だからこそ、苦しみや切なさが増しているのです。

また、ちょっとした小物やインテリアにも、作品世界を物語るこだわりがあります。

私は恭一の部屋にある、ちょっと高めの椅子がとても印象に残っています。

今ヶ瀬が膝を抱えて座っていた椅子に、恭一の婚約者となったたまきが座り、そして最後は今ヶ瀬を待つ恭一自身が座る…。

それぞれがどんな思いで同じ椅子に座っているのか…そんなところも見どころだと思います。

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映画『窮鼠はチーズの夢を見る』感想~過激な性描写だけじゃないBL超えの世界:まとめ

以上「映画『窮鼠はチーズの夢を見る』過激な性描写だけじゃないBL超えの世界」と題してお届けしましたが、いかがだったでしょうか。

これまで様々な愛の形を描いてきた行定勲監督が、撮るべくして撮った映画であり、出演者の魅力が存分に詰まった作品です。

ある意味、男女の恋愛では描くことのできない、究極に純粋な恋愛物語なのかもしれません。

また一人の男の成長物語といいますか、流されて生きてきた男が、しっかりと自分の足で、意志で、歩き始める話だとも言えるかもしれません。

いやいや、そんな勝手な残酷な…とも言えるかもしれませんし…ん~なかなか考えがまとまらない…

とにかくこの手の作品は、過激な性描写の話題ばかりが先行しがちですが(もちろんかなり過激です)、過激であればあるほど浮かび上がってくる切ない心理描写にこそ、この映画の真髄があると感じました。

気になる方は、ぜひぜひご自身の目で確かめてみてください!!

大倉忠義ファンも成田凌ファンも、そして原作ファンの皆さんも、きっと唸る作品なのは間違いありませんので!!

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