少女コミックが原作のこの映画。
10代の女の子がターゲットなのかな?
私のようなおじさんが観ても大丈夫なんだろうかと不安になりながらも、ちょっと気になったので観てきました。
原作も未読で、なんの知識もなく鑑賞。
高校生の時の自分を思い出しつつ、優しい気持ちになれる、とても素敵な作品でした。
主役の4人からしたらお父さんくらいの年齢なので、ちょっと的はずれな感想かもしれませんが、思ったことを書いてみますね。
「実写映画『思い、思われ、ふり、ふられ』感想 お父さん世代の私の胸に刺さったこと」
それでは早速内容に入っていきましょう。
映画『思い、思われ、ふり、ふられ』感想
「相手を思う」という優しさ
この物語は、全編にわたって「相手を思う」ということに溢れていて、とても素敵な作品だなと思いました。
相手を思うから自分の気持を押し殺してしまったり、周りに気を遣いすぎて、自分の本心が言えなかったり・・・。
それはとても息苦しくて辛いことだし、そんな生き方は良くないという人もいるかもしれませんね。
もちろん、ある意味ではそうだと思います。
自分の気持をはっきり伝えないと、かえって相手を傷つけてしまうことだってありますからね。
でも、相手のことを思うあまり、自分の気持を押し殺してしまうこと自体は、決して悪いことではないと私は思います。
それもやっぱり、根っこの部分では優しさだと思うからです。
そんなの本当の優しさじゃない?
ただ弱いだけ?
自分が傷つきたくないだけ?
そうかもしれませんね。
でも、それでもやっぱり優しさなんだと私は思うし、自分はその優しさに気付いてあげられる存在でありたいなと、この映画を観て思いました。
「気付いてあげる」という優しさ
朱里が、家族の中のバランスを取ろうとして、ついつい自分の本心とは違ったことを言ってしまったり、和臣も理央の気持ちを知って、朱里に対する思いを消そうとしたり・・・。
それはとても辛いことだし苦しいことだけど、でもその気持ち、その思いそのものは、決して悪いことではないと思います。
それはとっても素敵なこと。
朱里は家族のことを思っているからバランスを取ろうとしてしまうのだし、和臣も理央の気持ちを知っているから自分の気持を抑えようとする。
その気持ちは尊いものです。
だけど、だからこそ、もっともっと大切なことがあると思うのです。
それは、そんな2人の尊い気持ちに気付いてあげられること。
気付いてあげて、大丈夫だよと背中を押してあげられる存在になること。
それがいちばん大切なんじゃないかと、この映画を観て思いました。
だれかの「安全基地」になるということ
由奈が朱里のことを「私の安全基地」だと言ってましたね。
とても素敵な表現だなと思いました。
なにか辛いこと、困ったこと、自分では解決できないことにぶち当たったときに相談できる相手。
何があっても100%味方になってくれる人。なってくれると信じられる人。
そんな「安全基地」になってくれる人がひとりでもいたら、どんなに辛くても人生は歩んでいける。
50歳を過ぎたお父さん世代でも、やっぱりそう思います。
由奈に安全基地だと思ってもらえている朱里は、本当に素敵な女の子なんだろうなと思います。
そして由奈もまた、朱里が悩んでいるときに、「今度は私が朱里ちゃんの安全基地になりたい」と思う。
今まで出したことがないような大きな声で、朱里の母に「朱里ちゃんの話をちゃんと聞いてあげてください」と伝える。
安全基地とは、自分を守ってくれて、そして背中を押してくれる場所なんだと思います。
「背中を押す」ということ
想像するに、親も本当は子供の一番の安全基地になりたいと思っているはずなんです。
だけど、守ることばかり気になってしまって、背中を押せなくなってしまう。
心配が先走ってしまって、まるで心配の押し売りみたいになってしまう・・・。
親世代としてはその気持も分かるんだけど、でもやっぱりそこは、親の側も反省しなくちゃいけないかなと思います。
朱里とお母さんが、珈琲を飲みながら笑顔で話しているシーンがありました。
ほんの一瞬でしたが、素敵なシーンでした。
親は、本当はこうありたいと皆思っているのです。でもなかなかできない・・・心に刺さるシーンですね・・・。
背中を押すって、何も難しいことじゃなくて、まずは相手の話を聞く、ちゃんと聞く、それだけでも、背中を押してることになるんですね。
映画『思い、思われ、ふり、ふられ』主演の4人について
私は原作を知らないので、原作と比べてどうのこうのとは言えないのですが、4人が4人とも役にぴったりだなと思いました。
朱里の繊細さ…浜辺美波さん
朱里というのはとても難しい役ですね。
一見物怖じせず、いつも元気でハキハキしていて、自分の意見もきちんと言えるしっかりしたイメージ。
でも実際は、繊細で周りに気を遣いすぎて疲れてしまう。
同年代より大人な分、本当の自分を出すことができない。
甘えたいけど甘えられない。
ついつい強がってしまう。
高校生の時、こんな同級生いたな~。
一見強そうに見える人こそ、実は繊細で弱いもの。
そんな微妙な心の揺れを、浜辺美波さんは繊細な演技で見事に演じていたと思います。
特に目の表情が素敵でしたね。
由奈の強さ…福本莉子さん
朱里とは正反対で、自分に自信がなく、何をやってもうつむきがちな女の子。
でも、気持ちが純粋で真っ直ぐな分、実はとっても芯の強い子。
この物語でも、一番変わって、一番強くなった女の子でしたね。
変われたことを、素直に感謝できるところもまた素敵。
変わったんじゃなくて、もともと持っていたものの殻を破っただけかもしれないけれど。
福本莉子さん、由奈役にとてもハマっていたなと思いました。
どうしてこんなにぴったりなのかと思ったら、キャスティングの理由が「彼女の負けん気の強さが由奈と重なったから」だそう。
なるほどと納得。
由奈のポイントは「強さ」。
朱里と由奈は対称的な人物として描かれていますが、表面的には社交的な朱里と人見知りの由奈。
でも本質は臆病で繊細な朱里と負けん気の強い由奈。
そんな2人の対比も、浜辺美波さんと福本莉子さんにちょうど重なって、ぴったりだなと思いました。
理央の色気…北村匠海さん
とにかく色気がありますね。高校生にしては、ちょっとありすぎ?(笑)
今どきの高校生は分かりませんが、少なくとも私の周りにはいなかったかな(笑)
ちなみに俳優にとって色気ってとても大切なんです。
私が俳優の勉強を始めた頃、ある演出家の先生に、俳優にとっていちばん大事なものは色気だと教わりました。
でも色気って、出そうとして出るもんじゃないんですよね。
力んだところで出てこない…当たり前だけど(笑)
それは自然とにじみ出てくるものです。
北村匠海さんは、もうすでに俳優として一番必要なものを身に付けているのでしょうね。
まったく羨ましい限りです・・・(笑)
和臣の笑顔…赤楚衛二さん
赤楚衛二さんのことは、この映画で初めて知ったのですが、この4人の中で最年長だそうですね。
でも、ある意味いちばん高校生らしかったかな…(笑)
本人も天然さんだそうですが、和臣の屈託ない笑顔がハマっていましたね。
そして、朱里の浴衣姿にドキッとしたり、カメラのファインダー越しの朱里にハッとしたり、そんな大人と少年の間の微妙な表情が素敵でした。
映画で恋愛の知識はあるけど、自分はめちゃくちゃ奥手…確かに映画研究会にこんな奴いたなぁ(笑)と思わせてくれる役柄でした。
4人それぞれに特徴がよく出ていて、魅力あふれるキャスティングになっていたと感じました。
なによりも、高校生の時こんな奴いたな~と思わせてくれる(北村匠海さんの色気以外は^^;)キャスト陣だと感じました。
映画『思い、思われ、ふり、ふられ』感想まとめ お父さん世代も大切なものに気付く作品
以上、「実写映画『思い、思われ、ふり、ふられ』感想 お父さん世代の私の胸に刺さったこと」と題してお送りしました。
この映画を観て一番感じたのは、やはり青春は高校生のときだったな、ということです。
この歳になってみると、高校生の時って、なにか特別な感じがします。
中学生はまだちょっと子供だし、大学生になると、どっちが得かとか、いろいろと計算や駆け引きが出てくる。
親とぶつかることも多い時期かもしれないけど、それはだれもが通る道。
駆け引きなく人を好きになれる、大切な時期です。
その時の恋がずっと続くかどうかは分かりませんが、その時に感じた思いはずっと胸の中に残ります。
今、青春真っ只中の人も、昔、青春真っ只中だった人も、登場人物の誰かに自分を重ねながら、大切なものを見つけられる、大切にしていたことを思い出せる、そんな素敵な映画だと思いました。
光と影を生かした映像もとてもきれいです。
ぜひ映画館で観て欲しい作品です。