今回は舞台俳優と映像俳優の違いをお話ししたいと思います。
では具体的に、舞台俳優と映像俳優の違いはどこにあるのでしょうか。
【俳優になるには】勘違いしてる?舞台と映像の演技や環境の違いについて
舞台俳優は舞台に立つ俳優で、映像俳優は映画やテレビに出る俳優なのは分かると思いますが、もっと具体的に、演技の仕方や活動する環境はどのように違うのかお話しします。
演技の基本は舞台なのか?
まず私の経験をお話ししましょう。
私は最初しばらく舞台をやって、その後に映像、テレビや映画、CMの仕事をするようになりました。
俳優を始めたばかりの頃、先輩から、俳優の基本は舞台だから舞台をやっていれば映像の仕事なんて簡単だと言われたことがあります。
その時はそんなものかと思っていたのですが、舞台をやっていたからといって映像の仕事が簡単だったかというと、決してそんな事はありませんでした。
舞台は舞台の難しさがあり、映像には映像の難しさがありました。
もちろん舞台も映像も共通している部分はありますが、表現の仕方はだいぶ違うなと感じました。
舞台と映像の違い①
~演技について~
では具体的に舞台と映像の違いについて、まずは演技について見ていきましょう。
身体表現について
演技について言えば、映像と比べて舞台の方が大きな表現を要求されます。
舞台は何十人、何百人のお客さんの前で演じなければなりません。体全体を使って、劇場の隅にいるお客さんにまで届くように表現しなければならないからです。
逆に映像だと、舞台と同じように演じると表現がオーバーになってしまいます。細かい目の表情、視線とか、ちょっとした顔のニュアンスなどが大切になってきます。
逆に映像しか経験がない俳優が初めて舞台に出ると、体全体を使って表現することに慣れていないので演技が小さくなってしまいます。
アップで映された映像の場合はいいのですが、舞台で劇場の後ろの方から見ると、何をやっているのかよく分からない演技になってしまいます。
声の表現について
声の出し方も舞台と映像ではかなり違います。舞台は腹式呼吸で、一番うしろのお客さんにも聞こえるように発声するのが基本です。
ところが映像では舞台のように発声してしまうと、声が大き過ぎてオーバーな表現になってしまいます。画面で見ると、とても不自然な感じです。
映像では声をきちんとマイクで拾ってくれるので、囁くセリフは本当に囁くように言わなければなりません。
映像の発声は腹式呼吸ではなくて胸式呼吸が向いています。そういう違いもあります。
舞台と映像の違い②
~環境について~
次に、現場環境の違いについて見てみましょう。
稽古・リハーサル時間の違い
舞台は普通1ヵ月くらいの稽古期間があって本番があります。1ヵ月ほど練習できるということです。
ある程度時間をかけて、じっくりとその役を作っていくことができます。共演者の人達や演出家の人たちと一緒に作っていくという感じです。
それに対して映像、特にテレビドラマは、撮影当日の前にリハーサルがあることはまれです。
ほとんどの場合は自分1人でセリフを覚え、演技プランも自分で考えて現場に行き、撮影現場では1,2度テストをしてすぐに本番で撮影が行われます。
また台本も撮影日直前に、ときには前日に渡されることもあります。数日前にもらったとしても、撮影当日、現場に行ってセリフが変更になっているなんてことも珍しくありまえん。
映像、特にテレビは瞬発力がとても重要になってきます。ゆっくりじっくり稽古をして、役を作っていくということはできません。
そのスピードに対応できなければ仕事にならないので、ある意味舞台より難しいとも言えます。
舞台は、最初はうまくできなくても、稽古を重ねていくうちに、どんどん演技が上手くなっていくということもありますが、映像ではそういう時間的余裕はありません。
非常に厳しい世界だといえます。
映像は撮り直せるからラクなのか?
舞台は生だから、セリフを間違えたり忘れたりしたら大変だけど、映像は撮り直すことができるから安心だ、ラクだ、みたいに思っている人がいるかもしれませんが、とんでもありません。
それでなくても時間がない中で撮影が行われているのに、自分がNGを出して何度も撮り直さなければならない状況になるなんて考えられません。
緊張感は舞台も映像も同じな理由
撮影現場にはたくさんのスタッフや関係者がいます。
舞台は当然お客さんの前で演じなければならないので緊張しますが、映像だって周りにはたくさんの厳しい目を持った人たちがいるのです。
ある意味、舞台よりも厳しい環境の中で演じなければならないのです。
まだまだ現場に慣れていない新人の、俳優の卵のあなたにとっては、それはそれはプレッシャーのかかる、とても緊張する現場です。
舞台は生だから大変で、映像は撮り直せるからラクだという考えは、全く当てはまりません。
私の本音
むしろ舞台のほうがラクだなと思うことさえあります。1ヵ月近くも練習をして本番を迎えられるわけですから、舞台のほうが安心して本番に臨めるとも言えます。
【俳優になるには】勘違いしてる?舞台と映像の演技の違いや環境について~まとめ
以上、舞台と映像の演技や環境の違いについて見てきましたが、どちらが良い悪いとか、レベルが高い低いとか、そういう話ではありません。
舞台と映像では、表現方法や作り方が全く別物だということです。
舞台は演技の基本だからまず舞台をやりなさいと言う人も確かにいます。
ただ私の実感としては、舞台をやっていれば映像はすぐにできるかというとそんなことはありませんでした。
舞台から始めた私にとって映像の演技や現場は、慣れるまで非常に苦労しました。
もちろん役作りとか、役の解釈とか、そういう部分は映像も舞台も変わりません。あくまで表現の仕方や制作過程が違うということです。
舞台は一番うしろのお客様にも届くような表現が求められるのに対して、映像では表現としては極力何もしない方がいいと言われます。
同じ心の動きでも、それをどう表現するかは、時間的、技術的な制約がある中で、舞台と映像ではその方法論が異なるということです。
実際に経験しなければ分からないことも多いですが、私の経験があなたの進みたい方向への参考になれば幸いです。
※舞台の芝居を学ぶために便利なサービスがあります。こちらの記事も合わせてどうぞ‼
たまご俳優のマサキくん「芝居の勉強をするのに、たくさんの舞台を観たいけど、お金がなくてなかなか観に行けないんだよな…」女優を夢見るマリカちゃん「将来は舞台俳優になりたいという夢があるんだけど、地方の田舎に住んでいるの[…]